グローバル化の下での畜産クラスター事業(有)鈴木養鶏場の事例
平成28年4月12日
発表者紹介
(有)鈴木養鶏場は、成鶏15万羽を飼養し、飼料米や遺伝子組み換えでない原料を使った配合飼料を給与した安全で美味しい鶏卵の生産・販売やアニマルウエルフェア対策のための施設を導入するなど健康で優しい環境作りに努めている他、卵スイーツの加工・販売に取り組むなど6次産業化やブランド化に努めている。
発表内容
「グローバル化の下での畜産クラスター事業」
有限会社鈴木養鶏場 代表取締役会長 鈴木 明久 氏
養鶏が、私と秋川さんと2題あります。私は風邪を引いて声が出ませんので短くやって、あとは秋川さんにお願いいたします。どうぞよろしくお願いします。本来ならもっと美声なのですけど。
クラスター事業に私が申し込んだのは、クラスター事業の前に、強い農業づくり支援というのがあったのです。それを申し込んでおったら、大分県からはねられてだめだった。それで、たまたま県庁にその書類が残っていたので、26年補正のときに急に国が言ってきたのです。それで、「鈴木さん、この前のボツになったやつを出さないか」と言うから、「お願いします」と言って、お正月休みを返上して、5年先の経営計画書をばっとつくって、それで県庁の人と一緒に出した。そうしたら、一番早かったのか、内容がよかったのか、知らないけど、すっと通ったのです。
ほかの人が、クラスター事業は非常に使い勝手が悪いとか、そういうことを言われていましたけど、うちの場合は、出したのがみんな通ったから、使い勝手が非常によかった。それで、もうそれが終わって、この前の3月31日で終わったのですけど、会計検査も4月4日に見えました。会検は、もうずっと来ないという話ではないのだろうけど、非常に使い勝手がよかった。
何でよかったかというと、鈴木養鶏場がやっているストーリーが、それがクラスターとぴたっりと合ったのじゃないかなと思います。地域社会と一緒に共同してテークオフするとか、そういういろいろね。これも県の人がぱっとつくってくれた。
これは、(スライドNO2参照)システムを、日出町役場と一緒にしましたとか、そういうことです。
これはクラスター計画その1。(スライドNO3参照)甲種農家と提携してやっています。飼料米は私が、今年で多分10年目になると思いますけど、一番最初に10年ぐらい前に少しやって、順々に増やして、去年は1,300トンぐらい農家から集めました。飼料の配合割合を順々に増やして、今うちは6,000トンぐらい餌を使うんですけど、全部使えば60%ですから3,600トンぐらいなので、あと今の3倍ぐらいは使えます。これは10年ぐらい前から少しずつ増やしたのですけど。
それと、何が大事かというと、豚でも卵でもそうなのですけど、物をつくるのに大事なことは、需要に合った供給をつくりさえすれば売れるわけなので、需要が何かということがちゃんと先に見えなければならない。例えば卵だったら、コストをどんどん下げていけば絶対もうかるとかというのは、もう20年も30年も前の話。だから、うちはどういうのをしているかというと、直売所を持っています。非常にわかりやすいのですけど、キャッチフレーズが、「人に優しくて、鶏に優しくて、環境に優しい卵をつくっています。」です。
まず、ここに耕種農家と連携。これによって飼料米を入れます。そうすると、飼料米というのは、脂肪分がトウモロコシを100にすると56ぐらいなのです。だから、卵が非常にヘルシーです。食べやすい。それで、メタボのおじちゃんなんかにいいよということで、人に優しい。
それから、環境に優しいのは、もちろん鶏ふんを飼料米の田んぼに持っていって、田んぼからお米を持ってきて、休耕田を活用しますということで、休耕田がよみがえります。それで、環境に優しい。
それから、鶏に優しいのは、アニマルウェルフェアを取り入れた鶏舎を、今度クラスター事業でもつくりました。クラスター事業でつくったのは、アニマルウェルフェアの鶏舎の5棟目です。もう4棟はうちでやっています。うちは9棟しか成鶏舎はないのですけど、そのうち5棟目を今度のクラスターでしました。その前に自己資金とか借入金とかでも順次やっているのです。今、だから、アニマルウェルフェアが全体の飼育羽数の3割か4割ぐらいになっています。全部で15万羽おるのですけど、6万羽ですかね。9棟のうち5棟だから、もう10万羽ぐらいになるのですけど、アニマルウェルフェアにすると羽数が半分以下に減ります。だから、そういう感じなのですけどね。これから先、そういうシステム鶏舎に変えるかどうかは、さっきのお客さんの需要を見て改造します。
うちは1カ月に220〜230トンの卵ができるのですけど、そのうち180トンぐらいは、うちの伝票でスーパーさん、それから直売さんのところへ行って、残りの30トンか50トンぐらいを福岡の八女の馬場市場さんに出しています。馬場市場さんから餌をもらって、自家配もやっている。
これは、(スライドNO4参照)組織図です。いろいろアドバイスをしてくれるところ、地元の税理士さん等で役場の農林課長がクラスター協議会の会長です。
これがハード事業で、(スライドNO5参照)鶏舎と液卵加工施設をつくりました。それから、リース事業で洗卵機とバーコンベアを導入しました。でも、これだけみんな申し込んだら、全部採択してくれた。1年間でこれだけやったので、非常に忙しかった。でも、おかげで全部でき上がりました。
これは(スライドNO6参照)アニマルウェルフェアの説明です。
これが、(スライドNO7参照)普通の鶏舎からアニマルウェルフェア対応の鶏舎ですということです。
これは、(スライドNO8参照)農林水産省か何かのホームページに載っていたものです。平成19年に3トンだったのを、今、去年は1,300トン、今年の分は1,500トンぐらいだと思います。1つ問題は、何十ヘクタールという田んぼを、集落営農が多いのですけど、そこが飼料米からホイールクロップに変わる心配。何でかというと、ホイールクロップは10アール当たりで8万円くれるのです。
飼料米は数量払い制だから、一生懸命やったら13万円とかになるけど、捨てづくりすると6〜7万円にしかならない。集落営農で共同でやっているところは、交代でやるから一生懸命さに欠ける。そういう感じで、ホイールクロップになってしまう。うちに来ているのは、2〜3ヘクタールの専業篤農家みたいな人が一生懸命うちのをつくってくれています。多分今年は、1トンは超すのじゃないかと思います。
やっぱり補助金が将来なくなってもトウモロコシと競合してできるためには、キロ30円ぐらいでないと。種もみのことから、栽培のこと、収穫のこと、まだまだみんな手探りでやっています。だから、それをきちっと国なり指導機関が、お米ではない飼料米という餌をつくるというあれで、大分県の中部地域は期待できる。ばしっと早く決めないと、農家が高齢化してしまって、先が危ない、そういう感じに思います。それと、捨てづくりでも8万円くれるのか、一生懸命したらたくさんくれるのか、生産の整合性がないから、やはりホイールクロップでも努力した農家はいいとか。何かそういうふうにしないと、整合性に欠けると思います。
大事なことは、売れるものをつくるというか、そういうことを絶えず考えています。
クラスターでも非常に乗りにくいというけど、それでは経営者としてレベルが低いと思うのです。例えば、うちはそれはできました。でも、もう次に何をやろうかというのが、4つも5つも頭の中にあります。72歳ですから、あってもしょうがないというところはあるのだけど、うちは長男が社長で、三男坊を専務で、私が会長で、最初の矢が弱ってきたので、今3本の矢で頑張ってやっておるのです。あと2本がちょっとまだ育ちが悪いもので、まだ頑張ろうと思うのですけど、とにかくもう次に何をするというのが、1人で頭の中で湧いてこないと。
うちでいうと、今度は何をするかというと、例えば、この前は液卵の加工のをつくったから、次は、卵の殻とか。ロールケーキも売れ残りがいっぱい出ます。1日にパワーショベルで2杯か3杯、バケットで残ります。だから、それを今度は自家配合の餌の原料をつくろうと思います。だから、それのプラントがどこかいいのがないかなと思って、今、探しています。
それから、直売場も、お客さんが増えたので、またちょっと大きいのをつくろうかなと思っています。
エンリッチケージも、アメリカでは今度はケージではだめというのが、この前の日経新聞に出ていました。要するに、ケージ式はエンリッチであろうと何であろうとだめという姿が見えているというから、それもまた勉強しないと悪いなと思っています。
だから、絶えず問題意識が1人でわくように、一生懸命やっていたら1人でわくのじゃないかと思います。そういうことで頑張っております。
以上で終わります。