東電原発損害賠償手続き商系情報交換会の概要について
平成23年11月18日
東電原発損害賠償手続き商系情報交換会の概要について
全日畜では10月21日(金)に「東電原発損害賠償請求手続き商系情報交換会」を福島県で開催いたしました。賠償請求を行おうとしている17道県の基金協会および東北・関東地域の荷受組合担当者が参集し、全農福島県本部から講師を招き損害賠償請求の先駆けとなった福島県の請求算定方式についての意見交換と、商系畜産生産者を支援するため多方面からの活発な意見・情報交換が行われました。
翌22日(土)は参加者で被災地域の現地視察を行い、全村避難した飯館村や相馬市の津波被害地区の状態を車窓から、また南相馬市の生産者(有)いしがみ牛の農場を訪問し、組合長の小倉様から牛肉の販売価格が暴落していることなど現在置かれている窮状について説明をいただきました。
情報交換会議
主催者および来賓挨拶
西原登・全日畜代表理事
全日畜も設立以降、地域全日畜の設立、運営委員会の会合などその姿を固めてまいりました。その間、宮崎の口蹄疫対策など、生産者の組織としての活動成果を揚げることもでき、多方面にわたり活動を行っているところです。畜産生産者個々の経営努力には限界があり行政に対しては、やはり組織として対処してゆかねばならないところであります。本日ご参集の関係各県におかれては悩み深いものがあると思いますが、福島県で実施しているような方式を取入れ、本日の情報交換を意義あるものとしていただきたいと思います。
三品清重・福島県基金協会理事長
福島県においては多々不安を抱える中、県基金協会の事務処理尽力等によりようやく東電による第1回の補償が半額行われました。関係団体と連携協力しながら損害請求を継続しますが、風評被害をどのような線引きをするかが課題です。県の養鶏業界も2回の新聞広告で安全を訴えるなどしつつ頑張っていますが、市場が回復しないのが現実です。そのような状況で東電による補償は生産者にとって今後頑張り続けるために重要なものであり、本日の会での意見情報交換により連携を深め、皆様のお力もお借りしたい。
三野耕治・工業会専務理事
3月の大震災以後、予想もしなかった事態が生じています。工業会においても商社・他の飼料生産団体と連携して被災地区の港での原料繰りを行いました。東北は畜産の中心地であり私にとっても縁が深く、共に携わった県基金協会等関係団体でも多々意義のある成果を残してこられた方々の輩出地でもあります。残念なことに被災地となってしまいましたが有事の際のネットワーク基盤のある地域であり、本日参集された方々の意識も高いと思います。本日は全農さんのご厚意でこうした情報交換が行えることを感謝し、東電に対して連携・連帯して補償請求活動を行ってゆく決意を固める日かと思います。
開催にあたり
全日本畜産振興事業中央会事務局長 山田哲郎氏
商系団体が今、何をなすべきか、また本日の会議における期待成果の説明
商系生産者の窓口作りにおいて、各県基金協会には大変難しい県内調整をいただき、多くは基金協会が商系の一次窓口となっている。配飼協の活躍については先の農水省の全国畜産課長会議で畜産振興課の大島室長も触れられた。
賠償請求手続きにおいて、東電は畜産生産者については個別の請求様式を提示しておらず、団体にとりまとめてほしいとのこと。商系も福島県基金協会にいわゆる福島方式を整理いただき全国で利用している。本日の情報交換会の場を有効に活用していただきたい。
損害賠償請求については、どこまで地域拡大し、いつまで続くか全く予想がつかない。本日は商系の関係者である生産者・荷受組合・基金協会・全日基・日本飼料工業会・全日畜の6者が参加している。しっかり協力し合う体制を築いてほしい。
畜産部門における損害賠償 全農・福島県本部
全農・福島県本部畜産部畜産酪農課課長補佐 小松吉雄氏
今回、快く講師をお引き受けいただきました。
損害賠償請求の先駆けとなった福島県においては、賠償額算定の基本的な考え方を定め、協議会を設立し、統一された算定方式にて系統、商系の別なく請求を行いました。これを「福島県方式」と呼び、今後の賠償請求のモデルケースとなりました。
福島県の畜産部門における賠償請求についてはこちら
福島県基金の損害賠償対応
福島県配合飼料価格安定基金協会常務理事 浦山司郎氏
原発所在県であり最大の被害を被った福島県において、膨大な損害賠償請求事務の遂行にあたっての留意点や組織体制のあり方など他県に参考となるお話をいただきました。
情報提供・意見交換・質疑応答
各県基金協会・飼料荷受組合担当から各々の賠償請求対応状況、留意点などが提示され、互いの状況認識が深まりました。複数県を担当する荷受組合事務局と県基金との連携をどのように密接に保つかなど活発な意見情報交換がなされました。
情報交換会のまとめ
(協)日本飼料工業会 参事 末國冨雄氏
以下の文章を読み上げて提案した。出席した荷受組合、県基金協会の満場の拍手をもって確認承認されました。
原発事故による放射線汚染と、7月上旬に起きた放射性セシウム汚染稲わらによる牛肉汚染事件は広範に甚大な被害をもたらし、今なお解消の糸口も見えない状況にある。
JAグループは放射線による農業被害にいち早く対応し県単位で「JA県協議会」を設立し農家の損害賠償請求を組織的に行うことを公表したが、商系は独自に同様の対応を行うことは困難と判断せざるをえず、商系組織にとって存在意義が問われかねない状況となった。
このような状況下にあって、福島県基金協会においては、商系生産者の組織的な損害賠償請求のために、県畜産振興協会を仲介して福島県基金協会をJA福島県協議会傘下に置き、福島県基金協会をして損害賠償請求申請する窓口機関となる「福島県方式」を創設した。
この方式は他県にも普及し、各県基金協会が被害を被った商系生産者に対する組織的な損害賠償請求申請窓口として機能することとなった。福島県基金協会の三品理事長と浦山常務、さらに関係基金協会常務各位には、全日畜事務局として、これまでのご苦労に対して厚くお礼申し上げる。
飼料メーカーと商系生産者は共存共栄の関係にあり、これまでも飼料メーカーは生産資材、技術、経営等多様な支援を提供してきた。TPP参加問題やFTAなど昨今の畜産をめぐる情勢から今後はこのような支援なくしては畜産経営が成り立たなくなる恐れが生じている。
今回の損害賠償請求事務も、この意味においては経営支援である。
こうした情勢下に開催された本日の情報交換会の場で以下の3項目について確認したい。
- 商系生産者の原発事故損害賠償請求について、商系組織である日本飼料工業会、全日基、各基金協会および荷受組合は、連携して支援する。
- このため基金協会は、単独もしくは連携して説明会等を開催して荷受組合を指導する。また、荷受組合は、基金協会の要請に基づき必要な支援を行うとともに、関係する特約店を指導する。
- 全日畜は、東電原発事故損害賠償に関する商系生産者の意向を尊重して、商系生産者の経営改善について支援活動を行い、商系生産者の社会的な役割が果たせるよう努める。
畜産農家訪問、被災地視察
福島県南相馬市の域内生産者11農場で組織化した(有)いしがみ牛を訪問しました。
原発事故以来のさまざまな困難、苦境について語っていただきました。特にA5等級の価格が800円台との話には参加者一同が驚きました。また、工業会よりシンチレーションメーターを持参し、許可をいただいて牛舎内を測定したところ、0.6μSv/hと極めて低い値を示しました。