グループ活動によるこれからの養豚経営戦略(有)東海ファームの事例
平成28年4月12日
発表者紹介
(有)東海ファーム 代表取締役 高木 敏行 氏
(有)東海ファームは、母豚頭数1,000頭の繁殖肥育一貫経営で、規模、出荷量ともに東庄地域の中核農場である。高木代表は、「東庄SPF豚研究会」を設立し、飼料の共同購入や豚肉の一元販売などグループ活動を通して地域ブランド「東の匠SPF豚」を商標登録。最近は今後の豚肉輸出を念頭に入れて、農場HACCPにも取り組んでいるリーダである。
発表内容
「グループ活動によるこれからの養豚経営戦略」
有限会社東海ファーム 代表取締役 高木 敏行 氏
私は千葉県から来ております、養豚のほうでの高木と申します。私どもは私個人ではなくてグループで、これからどういうふうにこのTPPを乗り切っていくかという視点から説明させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
私は千葉県の東庄町というところで、養豚を12戸のグループでやっております。もちろん組織活動ですので、グループ全体のまとまりを欠かないように努力しております。
東庄町というのは、銚子市に近いところでございます。(スライドNO3参照)もちろん鹿島の飼料基地も近いので、運賃的にはトン1,000円か1,500円ぐらいで運べる地域です。
会員の経営状況です。写真は1人、欠けてしまっていますけど、全員で12名です(スライドNo.6)。これは労働力の配分ですけど、70歳の方は今度、世代交代しましたので、今おりません。(スライドNO7参照)
種豚の数の推移でございますけれども、12戸で、少ない人が100頭ちょっとから1,000頭ちょっとまでで構成しており、平均で350〜360頭でございます。平成20年度から25年ぐらいまで、飼料がトン5万円近くて非常に厳しい時期だったのですけれども、もちろん国からの飼料支援資金とか、そういったのが出た時期でございますが、その時点にみんな拡大をして今に備えたということでございます。(スライドNO8参照)
これは会員の豚舎ですけれども、今PED等の問題もあって、防疫についてはSPF豚ですので、当然ネットの規制とか、出入りのルールというのはあるんですけれども、さらに厳しくしております。(スライドNO9参照)
活動の概要です。会員は12名で、経過をたどりますと、平成3年ぐらいに3戸で始まったものが、今は12名に増えました。それは後で説明しますが、後継者がいて、全員、見込みがあるからです。
私たちのグループは、それぞれの農家が必ずSPF豚を使用していることを条件として、指定配合とし、特に子豚用と仕上げ用は指定配合で低コストな肉豚の生産をしております。種豚もほとんど雄を使うことが少なくて、精液、AI化を進めております。肉豚の出荷は関東方向で、テーブルミートを主体に11カ所ぐらいの販売先を持っております。
それを均等に公平に販売する出荷計画を毎月、生産検討会のときに決定します。来月の分というのは大体、毎月20日から25日ぐらいの間に来月の出荷予定を立てる。今、おおむね年間10万トンぐらいの出荷がございます。きちっとした形で何日に何頭、販売するか、予定経済で物を売るということを実施しております。
それから、特許庁から商標登録もとりまして、パテントを登録しております。それから、肉質の仕上げが変わる場合には、必ず試食をして、その肉が消費者のニーズに、おいしい豚肉になっているか、これは必ずチェックしております
あとは、後で出てきますけれども、耕種農家の連携による堆肥の生産とか、そういった連携をとっております。
これは検討会の様子でございます。(スライドNO13参照)
もちろん生産検討会の資料は、必ずこまめにそれぞれの農場でとって、その積み重ねによって生産指数を検討しております。
これは、今、進めているところですが、HACCPの認証農場を目指して、28会計年度でいいますと、29年3月末ぐらいまでに12戸全員、HACCPの取得を目指して、おおよそ達成できるかなとは思っていますけれども、努力中です。(スライドNO15参照)
生産成績の資料の一部なのですけれども、現在、うちのほうではシムコさんのSPFを使っておりますけれども、中では月間、単月ですと、12頭、離乳できている農家も何戸かあります。(スライドNO16参照)
種豚1頭当たりの肉豚成績も、これは後で表彰された絵が出てくると思いますが、平成26年度中央畜産会の事例発表会で農林水産大臣賞をいただいたときの数字をたたき台にしておりますけど、今は、もうちょっと出荷の数は、22頭ぐらいには増えていると思います。
あとは、生産資材の購入と肉豚の販売について紹介します。これはさっきも申しましたけれども、11社に販売しております。規模の大きい農家も小さい農家も全て一律の決めた餌と価格で購入しております。種豚は全てAI。雄、NSを一部、使っているところもありますけれども、ほとんどAI化でございます。生産した肉は首都圏を中心に、「東の匠SPF豚」のブランド肉として付加価値をつけて販売しております。町おこしにも一役ということです。
いろんな形で販促活動をし、いろんなところに働きかけておりまして、右下が全員の農場と、全員のスタッフの写真でございます。行政も、町長を筆頭に、地域の産業の中で主たるものということで、力を入れて応援してもらっております。
これは商標登録をもらったときの写真です。(スライドNO21・22参照)
いろんなところに、これはスーパーの販売とか、うちの女性会員とか後継者の人がスーパーの販売に手伝いに行っているところでございます。(スライドNO23参照)
これは、さっき申しましたように、新しいテストの様子です。仕上げ用ですと、必ずこういうしゃぶしゃぶとか、豚カツとか、いろいろ試食して、ちゃんと目的に合った豚肉になっているかどうか、チェックしているところでございます。(スライドNO24参照)
あとは、大事な環境への対策でございます。もちろん尿については浄化槽処理を全部やっておりますし、堆肥ともみ殻を、無償とか地域の連携の中で交換していますが、千葉県はどうしても全体として堆肥がなかなか昨今は売れにくい。買い手市場であって、条件的に難しいなという問題も出てきております。(スライドNO26参照)
これは、前に説明した、農林水産大臣賞をいただいたときの写真でございます。(スライドNO27参照)
問題はこれからの展望でございます。
1つ目は、さらなる生産成績の向上を目指して。というのは、外国からダンブレッド、TOPIGSとかという離乳頭数を目的とした多産系の豚が入ってきておりますけれども、ここの生産者の出席者の中でも、養豚の方で多少、飼育をされるなり、され始めた方があるように伺いました。
私はやっぱり国産の豚というのはおいしさをメーンにつくっていかなければならない。それで、なおかつ、関東はどうしてもテーブルミート、食材として、海外から入ってくるダンブレッド、TOPIGS等はどうしても、離乳頭数は多いけれども、更新率の問題があったり、肉質の保水性、それから本来、ヨーロッパでワインとパンとか、ウィンナーを主体とした、そういった加工用の豚であるので、今後どうなるか、わかりませんけれども、大手ハム・ソーセージメーカーが一律の規格で使うのには使いやすいけれども、関東である程度おいしい豚として付加価値をつけて、いろいろなテーブルミートの利用先として買っていただくのには、ちょっと難点があるのではないかというふうに私らは考えております。
それで、経営間の格差をなくしてレベルアップ、生産技術を平準化するということも努力しております。私どもの12人のメンバーの中には、もう6〜7年になりますけれども、新たに加入する前に半年以上、餌代も払えない、それで立ち行かなくなったので、ぜひ仲間の末席に入れてもらえないかということがあった。
そのときに、例えば流動負債、餌代の棚上げがどのくらいあるのか、それは棚上げにして長期返済に切りかえて、私どもの飼料価格、生産指数、種豚に置きかえた場合に再生可能かということで、農業事務所さんとか政策金融公庫さん等に審議してもらったら、まあ、いけるということで、その人も今年には政策金融公庫から新たなる資金借り入れをして、倍増の施設にとりかかっております。そういった面でグループとしていい方向に進んでいるのかなと、自分なりには考えております。
3番目としては、後継者の中から、私も大分いい年齢になったので、次のリーダーとの世代交代が控えております。そういうのは1つの問題になっております。
4番目としては、税制面で有利と言われているような法人経営への移行。当時2戸だったのですけど、今4戸で、6戸への移行中でございます。昨日の会議でもございましたけれども、農業のほうも法人化を進める中で、もうちょっと農業法人とかにはそういった税制面の優遇措置があってもいいのじゃないかというふうに私どもは考えております。
最後に5番目として、輸出は非常に難しいことがありますけれども、グループとして年間10万頭の飼養規模にある、千葉県は、鹿児島、宮崎に次いで3番目の養豚生産県でございます。千葉県では年間の肉豚の出荷頭数が約100万頭ちょっとあります。私どもは約10万頭、10%ぐらいあります。
さっきも申しましたように、来月のオーダーを8〜9割は、きちんとその11カ所の販売先に決めるということで、相手が計画経済で、その先に物を売れるというような1つの販売ルールをしいております。それと、買い入れ条件も、みんな多少順位がつくぐらい違うので、公平に売れるように全部、販売は平らにしております。
そういった面で、10万頭の計画経済、おいしい豚、HACCPの承認、そういったものをもって将来、輸出というものがもうちょっと潤沢になるのであれば、いつでも受けられますよという、オファーを待っていられる、そういうような状態にできたらと思っております。
以上、説明を終わりましたけれども、大体これで終了させてもらいたいと思います。ご清聴、ありがとうございました。