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肥育牛・酪農による一貫経営を目指して~ピンチをチャンスに~(有)金子ファームの事例

平成28年4月12日

発表者紹介

金子さま(有)金子ファーム 代表取締役 金子春雄氏

(有)金子ファームは、青森県七戸町を生産基地に肥育牛12,000頭(乳用種・交雑種・黒毛和種)、搾乳牛250頭を飼育し、肥育牛・酪農による一貫経営を目指している。これまで歩んだ道程は厳しい試練の連続であったが、常に家族全員で力を合せ「牛さん」に畏敬の念をもって接している。ピンチ時の発想の転換から金子ファームの挑戦は始まる。

発表内容

「肥育牛・酪農による一貫経営を目指して (ピンチをチャンスに)」
有限会社金子ファーム代表取締役 金子 春雄 氏

スライドNo.1

スライドNo.1

スライドNo.2

スライドNo.2

私は45年間、牛さんとともに生活をしてきました。そういうお話をしてしまえば夜までかかりますので、今日は途中からのピンチについてお話をさせていただきます。

金子ファームは、優良種、ホルスタインの雄を去勢して、それの肥育をずっとやってきました。そして、これはジェラートのお店の「NAMIKI」と、「お肉を食べられるところがあればいいよね」という地域の人からの要望もありまして、「NARABI」というレストラン、をやっております。

酪農はごくごく最近のスタートでございます。現在、金子ファームでは180ヘクタールの土地を所有しています。一部借り入れもありますけれども、資源循環型といいまして、牛さんから出た堆肥を畑に戻してコーンを栽培したり、近隣のニンニク、リンゴ、いろんな野菜農家さんに堆肥として販売したりしています。

地域に嫌われては畜産経営は成り立たないという意識も以前からありました。臭い、汚いというマイナスのイメージが時々聞こえてきたことがありまして、自分だけが生き残る方法はまずいなと。何とか地域の皆さんに理解してもらいたいという意味合いも含めまして、菜の花を毎年10ヘクタール、そしてヒマワリを同じように植えて景観作物で、目で見て楽しんでもらうように取り組んでいます。

スライドNo.3

スライドNo.3

スライドNo.4

スライドNo.4

スライドNo.5

スライドNo.5

事業概要です。(スライドNO3参照)先ほど言いましたように肥育部門が主な収入でございます。9割以上。それから酪農部門が少し。それからハッピーファームという約75ヘクタールの土地のところに、農業を少しでも理解してもらいたい、畜産を理解してもらいたいという意味合で触れ合いの場として今活用させてもらっています。次お願いします。

経営の内容ですけれども(スライドNO4参照)、今、金子ファームではトータルで1万1,000頭、乳用牛が7,000頭、F1が3,000頭、和牛が1,000頭、あと酪農のほうは経産牛が220頭という構成になっております。

最近3カ年の活動ですけれども、肥育牛は去年ようやく1万頭に達しました。それから酪農部門のほうは昨年の畜産クラスターの活用もありまして、今、日産6トンに達しています。少しずつ近づいております。それからハッピーファームのほうは、今、1年間に20万人ほどの来場者数になっております。

肥育というのは本当に、私の努力はせいぜい牛を殺さないように管理するくらいです。というのは、ほとんどが外的要因です。食べさせる餌に関係する為替などです。牛飼いをするのになぜ為替の勉強をしなくてはならないのだと。為替とは、いったい何だと。自分の努力とは何なのだろう。肥育事業とは何なのだろう。常々そういう疑問を持ちながら、毎日のように走って生産している状況です。

スライドNo.6

スライドNo.6

これが1991年ですから(スライドNO6参照)、牛肉の輸入自由化ですね。このときには子牛の価格安定対策とか肥育牛の価格安定対策が強化されました。金子ファームではこの時どうしたか。私の周りの人は、以前はホルスタインの肥育を結構やっていました。でも、海外から安い牛肉が入ってくるようになって、品質の違ったものをやろうということで、和牛のほうに、大概F1とかそちらのほうに皆さんが行った。でも、私は逆にホルスタインをこのまま続けていこう、さらに数を逆にふやしていこうとしました。それは素牛について通常これまで取引のないところからでも、JAさんからでも、ホルスタインの素牛どうですか、というご商談がありました。そういういろんな情報を総合して、よし、うちはホルスタインでやる、よその人はよその人だとの信念で進んでまいりました。

それから2001年、国内で予測もしなかったBSEが発生して、飼料工場さんも多大な負担を強いられて、製造ラインを変えていただきました。安全・安心の取り組みは、金子ファームでは以前から取り組んでおりました。今は1万1,000頭の牛を飼っておりますが、決して、もっとお金をもうけたい、もっとぜいたくをしたい、そういう意味合いで牛を増頭してきたつもりはございません。というのは、こちらから営業することはほとんどありません。うちの販売先から「牛を売ってくれ」と云われます。でも、簡単に、はいわかりました、というわけにはいきません。ただ相手に利用されてもつまらないので、取引を始める前にはいろんなお話をさせてもらって、そして1つの会社と取引を始めると、今度はまた違う会社の方が来られて。

そういうふうに少しずつ輪が広がってきた。前の取引先をやめて次のところに移るのではなく、生産できるまで待ってもらって、そういうふうな流れで、今、結果的には1万1,000頭になっています。でも最近は、もうやれませんから、と断ってはいます。

この2001年のときは、そういう具合に、以前から金子ファームは安心・安全は当たり前だと云われていました。私が農家さんに堆肥を配達に行くと、「おい金子、野菜食うか。ネギ食うか」と言われ、「いや、食べたい」と言うと、形のいい、虫が食っていないようなのはもらえない。「あ、それは人が食うものじゃない、こっちがおいしいんだ」、という。そういうふうな言い方をされたのを若いときに経験しました。

私は、食べ物をそういう考えで生産しているのか?と疑問を常に持ちながらやっておりました。これではちょっとまずいのではないか、という考え方が常に心の底にありました。この2001年のときには「健育牛」として、素牛までもモネンシンとか抗生剤を使わない素牛。そして出荷するまでも同じようにモネンシンやサリノマイシンを使わない、ホルモン剤は当然使っておりません。そういうブランドで、商標登録をとってやっております。

このときに交雑種の肥育も開始しました。BSEというのは、物すごい影響が出ましたが、いずれ収まる。自分のやっていることに間違いはないという信念に基づいて進めてきました。このときも確か素牛とかが大幅に値下がりして、そういうときは牛舎に通常は10頭のところを20頭でも入れ、牛さんには大変窮屈な思いもさせながら経営してまいりました。

スライドNo.7

スライドNo.7

次のピンチは、約5年前ですか。(スライドNO7参照)東電さんの被害がございました。このときに今思えばありがたかったのは、全日畜組織の活動でした。今の東電の社長さんになられた廣瀬社長さんと直接交渉して、「一日も資金繰りが大変だから」とお願いし、速やかな回答をいただいて、何とか経営を続けることができました。

このときに金子ファームは、地域に根差した牧場の展開、さらに地域とともに歩んでいこうということで、ジャージー牛を導入して、ジェラートの店を始めました。

私は年に1回か2回、海外の世界遺産を見て歩いております。大分前にイタリアでジェラートを食べて、ああ、こういうおいしいものがあるのだと頭の中にちょっと入っていた部分がありました。息子たちと相談して、やはり牧場に景観作物を植えても、何か食べるものがあったほうがいいよな、という発想で始めました。
いろいろ息子たちとも協議して、国道4号線にも面している土地ではありますが、牧場の真ん中のほうにつくりました。

最初、いろんな人から、誰がそんなところに行くの、そんな場所わからない、と言われました。でも私たちの狙いは、牧場の畜産の作業現場を見てほしい。邪魔になる場面が出てきたら、皆が寝ているうちに働こうと。暗いうちに堆肥散布してプラウをかけてしまえば臭いもおさまるぞと。そういう工夫も入れながら、こだわった。日本一おいしいジェラートをつくろうと。設備屋さんには、7頭でパイプラインを設備するかと笑われたことがありましたが、でも原料の品質にこだわって正解でした。それで、やりました。

スライドNo.8

スライドNo.8

スライドNo.9

スライドNo.9

次のピンチは、EPAとかTPPの大筋合意です。(スライドNO8参照)今、素牛の奪い合いをしております。もう食べ物の類を越えてしまって、飾り物か置物のような価格です。決して売れて価格が高いわけではない。子牛が不足していて高騰しています。息子たちと、今後どうするか、どう生き延びていくかを検討した結果、地域で離農した酪農家の牛舎等の活用を考えました。そして、畜産クラスター事業を全日畜や、県にお願いしました。パイプラインとかそういう設備を新たに入れかえて、安定的な肥育素牛の供給と、牛乳が足りないのであれば牛乳も生産しようと、そういう考えで取り組みました。地域の使っていない畑も積極的に借りて、今、取り組んでおります。

スライドNo.10

スライドNo.10

スライドNo.11

スライドNo.11

スライドNo.12

スライドNo.12

これは(スライドNO10参照)肥育牛の牛舎の風景です。うちの和牛はまだ3〜4年と歴史が浅くて、ピークでは約2,000頭までぐんぐん飼いました。でも最近はやめようと、休もうということで、今は月30頭ぐらいの導入で抑えています。まだまだ、素人ですが、ホルスタインの肥育をやった牛は、結果が松永さんには負けますけれども、その次の賞とか、それでも4番手の賞をいただくことができました。

これは(スライドNO11参照)独自産業ということで、約20万人の方にジェラートの店とレストランでお肉を食べてもらっています。子供連れの方が来られて、1日遊んで無料で馬車とかを見たり、動物に触れ合うということもやっております。

これは(スライドNO12参照)ハッピーファームの牧場の全体です。菜の花と、あと真ん中に築百年の南部曲屋があります。馬さんと人が一緒に生活した貴重な建物でございます。カヤぶき屋根を約3,500万円かけて修復することができました。

スライドNo.13

スライドNo.13

スライドNo.14

スライドNo.14

酪農部門は今220頭です。あとは子牛を仕入れして、地元の育成農家とか北海道の育成牧場に今110頭ほどお願いしております。(スライドNO13参照)

もう40年以上も経過した牛舎を利用しております。40頭とか50頭の牛舎です。スタッフ15人くらいに頑張ってもらっております。

酪農部門は、デントコーンが100ヘクタール、今年は130ヘクタールほど栽培します。獣医師さんは地元に5名。常に5分で来られる場所ですので、一緒に指導していただいております。(スライドNO14参照)

スライドNo.15

スライドNo.15

スライドNo.16

スライドNo.16

畜産クラスターで昨年、設備を入れて、今、日産約6トンです。建物があった関係で、中の設備を入れかえたら即生産できるというのが最大の魅力で、すぐ結果が出て大変よかったと思っております。(スライドNO15・16参照)

スライドNo.17

スライドNo.17

スライドNo.18

スライドNo.18

金子ファームの酪農の取り組みです。(スライドNO17・18参照)
上のほうは、手をかける前の古い牛舎で、下は設備を入れかえて、天井の屋根が落ちたところを直したとか、それぐらいで手をかけた写真です。

クラスターで導入させていただいた。まだ酪農の経験のないスタッフは約半分ほどおりますけれども、楽しく生産しています。和牛の受精卵をやっておりますけれども、受胎率も本当によくて、牛乳の1頭当たりの生産量も地域には負けない数字が出ていて、私のほうが逆に驚いております。

スライドNo.19

スライドNo.19

スライドNo.20

スライドNo.20

酪農経営の現状と課題としては、デントコーンを基本に、少しでも安定的に肉牛を生産するために子牛の生産もしていくことによってコストも下がる、という考え方で、これからも酪農のほうに力を入れて頑張っていきたいと思っております。(スライドNO19・20参照)

ギガファームと書いてありますけれども、松永さん達に追いつけと、うちの息子たちや若いスタッフに今ハッパをかけている、そういう状況です。今後もクラスターを活用させていただければと思います。

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